今日も云われた。 『聖母の子』
お父様は亡くなられたけど、私は雨宮家の娘、雨宮憐。お父様とお母様の娘だ。
そう思いたいのに、思い切ることが出来ない。 何故?
「れん、だいじょうぶ?」
抑えめな声が耳に届き、暗闇の世界が掻き消された。
「え? どうして?」
私は布団から上半身を起こし、訊ね返した。
「だって、不安そうなかおしてたから」
そんな顔してただろうか? 目を閉じても表情に出てたのだろうか?
「いえ、私は大丈夫よ」
声に力が入らない。これではアリスを不安させてしまう……。
「うそ、だいじょうぶじゃないよ、絶対……」
この子は……アリスはこの女学院の学生から差別的な目で見られている。
今日だって『金髪可愛いね』と云っていた子がいたが、表情を見ればわかる……当てつけだろう。
一番辛いのは自分のはずなのに私の心配なんて……本当に心の優しい子。だからアリスが好き。
真っ暗な部屋だけど、隣のベッドで上体を起こしたアリスだけは、はっきりと見える。
綺麗な金髪がゆらゆら揺れている。
ゆっくりと歩みより、静かに抱きついてきた。
「アリスはずっといるからね……」
温かい。真冬の部屋はこんなに寒いのに、アリスの身体は私に優しかった。
「私は自分がわからないの……」
もう『雨宮憐』と云う、自分の名前に自我同一性を保持できなくなっていた。それはすなわち、自身の崩壊を示す。
「だいじょぶだよ。れんは私が知ってる……私が認識できるから『れん』はれんだよ」
必死に言葉を考えて話して包んでくれる。抱きしめられたアリスの身体からするいい匂いが、脳を刺激した。
「アリス、日本語上手になったね」
気がつけば私は、彼女と唇を重ねていた。
ごく自然に、無言の同意と心の繋がりで。
お父様は亡くなられたけど、私は雨宮家の娘、雨宮憐。お父様とお母様の娘だ。
そう思いたいのに、思い切ることが出来ない。 何故?
「れん、だいじょうぶ?」
抑えめな声が耳に届き、暗闇の世界が掻き消された。
「え? どうして?」
私は布団から上半身を起こし、訊ね返した。
「だって、不安そうなかおしてたから」
そんな顔してただろうか? 目を閉じても表情に出てたのだろうか?
「いえ、私は大丈夫よ」
声に力が入らない。これではアリスを不安させてしまう……。
「うそ、だいじょうぶじゃないよ、絶対……」
この子は……アリスはこの女学院の学生から差別的な目で見られている。
今日だって『金髪可愛いね』と云っていた子がいたが、表情を見ればわかる……当てつけだろう。
一番辛いのは自分のはずなのに私の心配なんて……本当に心の優しい子。だからアリスが好き。
真っ暗な部屋だけど、隣のベッドで上体を起こしたアリスだけは、はっきりと見える。
綺麗な金髪がゆらゆら揺れている。
ゆっくりと歩みより、静かに抱きついてきた。
「アリスはずっといるからね……」
温かい。真冬の部屋はこんなに寒いのに、アリスの身体は私に優しかった。
「私は自分がわからないの……」
もう『雨宮憐』と云う、自分の名前に自我同一性を保持できなくなっていた。それはすなわち、自身の崩壊を示す。
「だいじょぶだよ。れんは私が知ってる……私が認識できるから『れん』はれんだよ」
必死に言葉を考えて話して包んでくれる。抱きしめられたアリスの身体からするいい匂いが、脳を刺激した。
「アリス、日本語上手になったね」
気がつけば私は、彼女と唇を重ねていた。
ごく自然に、無言の同意と心の繋がりで。
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